リサーチャーの役割

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hakken

日頃、懇意にしていただいているリサーチャーの方から、分析手法研究のお話をいただきました。その分析手法について、かつて一緒に仕事をされていた方から 「やってみてはどうか」と進言を受けていたそうです。その方が最近病気で亡くなられてしまい、遺志を受け継ぐ形で私に話を持ちかけてくれたというのです。 私自身は、亡くなられたご本人と面識はないのですが、過去の功績を見るにつけ、「これは形にしなければ」と思ってしまいました。核となる手法そのものは、 古くからあるものですが、一般的な多変量解析などと組み合わせれば、発展的な分析手法が開発できそうです。ということで、早速資料をお借りして、勉強して いる最中です。

さ て、これについてはおいおいご報告させていただくとして、今日はその過程でふと思ったことを書きたいと思います。インターネットで情報収集をしている過程 で、某企業の研究者の方の発言に行き当たりました。その企業で使っている分析手法の研究開発の成り立ちについてのくだりの中で、「市場調査会社に調査の仕 事を委託していたが、やがて市場調査会社に期待できる部分が少ない」ことを悟り、自分たちで開発に乗り出したというのです。これにはすぐに既視感を覚えま した。そういえば、かつてJMRAのカンファレンスに出席した際にも、ある飲料会社のリサーチャーの方が講演の中で同じようなことを言っていたのです。そ の方は、調査会社に求める能力として触れていたのですが、とかく受け身になりがちな調査会社のスタンスを憂い、「調査会社からの提案を待っている」という ことだったと思います。

調査業界でリサーチャーとして仕事をしている立場からしてみれば、これほどシンプルで厳しい指摘はないと、その時 思ったものです。日常の業務に忙殺され、日々の仕事をこなすだけで精一杯になりがちですが、先日の研究者の方の発言にふれて、テーマを持って仕事をするこ との大切さに思いを新たにしました。
企業のリサーチ担当者が自社の商品開発や顧客ニーズの発見に傾けている情熱と、少なくとも同じ熱意を持って、 私たち調査業界のリサーチャーも調査に取り組まないといけないのだと思います。経験を重ねることは重要ですが、ある程度の経験を積むと、そこまで蓄積した ノウハウで大概のことはこなせるようになってしまいます。例えば、調査票を設計するにしても、仮説や調査の目的を聞けば、頭の中にあるデータベースから、 質問文と選択肢が出来上がってしまうといった具合です。これはこれで一朝一夕で備えることのできる能力ではなく、リサーチャーとして必要な能力なのです が、ここにもう一つ「クライアントを喜ばせたい、驚かせたい」精神を介在させると、さらに面白い提案をすることができるのだと思います。何も新しい分析手 法を開発したり、最先端のインフラを整えるなど大きなことをする必要はないと思います。調査という仕事はデータの一貫性から過去を踏襲する傾向があります が、常に前回より上回る企画を提案しようと努力する姿勢も一方で必要だと思うのです。

最近は、調査会社の実査会社化が進んでいるように思 えます。つまり、「企画と分析は自分でやるから、データだけ集めてきてほしい」というニーズが増えてきているのです。同時に、調査業務の自動化も進んでい ます。では、クライアント側ですごい分析をやっているかというと、必ずしもそうではないかもしれません。むしろ、「それなら自分たちでできるよ」と思わせ てしまう企画やアウトプットを調査会社が届けてきた結果、冒頭の研究者の方のようにある種の諦めを抱かせてしまっているかもしれないのです。業務の自動化 も一見すると、ヒトの介在する余地がなくなってきているようにも見えますが、ヒトにしかできない部分に注げる時間が増えたと見ることができます。

「クライアントを飽かせず、ときにはサプライズをもたらすことのできるリサーチャーになれるよう日々鍛錬しなければ」、分析手法の研究をしながら、こんなことを考えていました。

2010-05-10 | Posted in リサーチNo Comments » 

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