電話調査の現場:その1

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かねてから、電話調査の実際について一度記事を書いておきたいと思っていました。
というのも、現在のブリーズを立ち上げるまでの前職で、長いこと電話調査に関わっており、その現場の厳しさをこれでもかと味わっていたからです。
前職では電話調査事業の起ち上げから関わり、およそ10年にわたって様々な調査を経験させていただきました。ちなみに、ここでいう電話調査とは定量調査の主に一般企業や各種団体を対象とした調査です。

電話調査というと、選挙前や政権が変わる前後に新聞などで発表されるものがお馴染みですが、私が関わってきた調査の多くは、いわゆるB2B(ビジネス・トゥ・ビジネス)調査です。この世界は、海外からの依頼を中心にニーズが多い一方、運営の難しさもあり、国内では専門的に行っている会社が少ない分野です。
今回は少し長くなりますので、2回に分けてご紹介したいと思います。調査を依頼する側、そして調査を実施する側の両方の立場の方の参考になれば幸いです。

一般企業に電話をかけ、調査条件に該当する担当者が所属していると思われる部署につないでもらい、調査への依頼をする。
こ れが、いかに大変な労力を要するかは、調査に関わりのない方でも想像に難くないと思います。大手の新聞社など看板が付いているならまだしも、聞いたことも ないような市場調査会社からの電話であれば、なおさらです。大抵の場合、ふたつ返事で承諾してくれるということはありません。実際にアンケートに回答して もらうまでに、いくつかのステップを踏むことになります。対象部署につないでもらい、依頼状を送付した上で、協力の可否を尋ねるといった具合です。
ところが、せっかく協力を取り付けても、スクリーニングで条件から外れてしまい、ご協力いただけないというケースもあります。ここで、社内の別の適任者を紹介していただければ良いのですが、それは幸運なケースです。
電話調査の難しいところは、調査への協力を取り付けるリクルートの部分にあります。電話調査の難しさの90%が、ここにあると言っても決して言い過ぎではありません。
担 当者と調査員が最も心血を注ぐ部分です。担当者には、調査員からよく話を聞きながら、クライアントに報告する一方、ひとつひとつ問題を解決していくきめ細 かい実査管理能力が求められます。また、調査員は、何度も門前払いを受けながら、対象企業の担当者まで取りつないでもらい、調査を依頼する粘り強さと高度 なコミュニケーション能力が求められます。

例えば、海外からの依頼の場合は、どうしても質問文が「翻訳っぽく」なりがちです。電話調査は、調査員が画面上に表示される質問文と選択肢を読み上げるのですが、これが「翻訳っぽい」と、それだけで対象者の方は怪訝な態度に変わってしまいます。
電 話調査の場合、読み上げる文章をスクリプトと呼んでいますが、これを勝手な判断で変えることはできません。そこで、調査員からのフィードバックを参考に、 クライアントに修正を提案することになります。リアルタイムでこうしたやり取りを重ねることで、精度を上げていきます。

また、対象者の所 属部門や役職が海外と一致しないということもあります。これは、もうほとんど毎回の課題となります。英語の役職名は、たいていの場合、日本ではバッチリ一 致する役職名がありません。そこで、職務内容や責任の範疇から、該当する人を探し当てるといったアプローチを取ったりします。

特に母数となるサンプルが少ない場合、これは大変です。サンプルが豊富にあれば、いずれは依頼にこぎつけることができます。数打ちゃ当たるの原理です。
海外では必要なサンプル数の10倍程度のサンプルを用意すれば設定数をクリアできると言われていますが、日本国内の場合は、経験上15~20倍のサンプルが必要になります。つまり、1件の有効回収を得るために15~20社に電話をかける必要があるのです。
例 えば、対象とする母数が少なく、全数を抽出しても設定数の7~8倍程度しかサンプルを用意できないケースもあります。これをいつものやり方でやれば、早晩 サンプルは尽きてしまいます。そこで、できるだけサンプルの消耗を減らす方法を考えます。実際には、進めながら、効率よく回収できる方法を模索していく感 じに近いです。非常にストレスのかかる作業となります。

次回は、電話調査の管理の具体的な話をご紹介したいと思います。

2013-02-12 | Posted in Blog, リサーチ手法No Comments » 

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