East and West : 和を以て貴しとなす?- 1/2

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ESOMAR発行の機関誌「RESEARCH WORLD」をペラペラとめくっていたら、興味深い記事がありました。
ちょっと長くなりますので、2回に分けてご紹介させていただきます。

それは、ミシガン大学教授のRichard Nisbett氏による「All in the mind」というタイトルの記事です。
ざっくりですが、記事のメッセージは「グローバル化が進んだとは言え、西洋人と東洋人では、考え方が違うので、その違いにきちんと配慮したアプローチの仕方をしましょう」というものです。
「そんなこと知っています!」とツッコミが入りそうですが、記事の中で紹介されていた事例がなかなか興味深かったのです。

記事としては、西洋人と東洋人との違いが主旨ですが、東洋人の特徴を示す例として、日本人の事例が多く紹介されていたのも日本人としては面白かったです。
例えば、こんな実験結果が紹介されていました。日本人とアメリカ人の被験者に、水槽の様子を20秒間見てもらい、記憶に残っていることを説明してもらったところ、日本人が水槽の中全体の様子を説明したのに対し、アメリカ人は水槽の中で最も目立っていたものを説明する傾向があったとのことです。

日本人は「水槽の中には水が流れていて、水の色は緑で、水槽の底には岩や貝があり、3匹の大きな魚が泳いでいました」と説明したのに対し、アメリカ人は「大きな魚が右方向に三匹泳いでいて、腹の部分に大きなストライプがあり、底には岩と貝がありました」と説明したそうです。さらに、日本人はアメリカ人に比べて、岩や貝など水槽の中を構成する要素や「貝の隣に藻があった」など互いの要素どうしの関係性を言及した人が多かったとのことです。

筆者は、この例を引用して、東洋人は自分と周囲の人の「関係性」の中で自分を捉えるのに対し、西洋人は自分がどうであるか、つまり「個」として捉える傾向があると分析しています。このこと自体は、特に目新しい発見ではないかもしれませんが、このような実験にも民族の特性が表れてくるというのは興味深いですね。

そこで気づいたことがあります。この実験の日本人とアメリカ人の説明の仕方って、日本人とアメリカ人の文章の書き方や話し方の文脈に似ているなと思ったのです。
日本人は、物事を説明する際に、まず状況を説明し、最後に結論を持ってくる傾向がありますが、英語圏では最初に結論を持ってくるというあれです。

筆者は、こうした事例から、「社会」や「個人」に対する東西の意識の違いがビジネスにおいてどんな意味をなすかを説明しています。
例えば、広告や口コミの影響力について、アジア人はそこから彼らを取り巻く人や環境、他者との同一性をより意識するのに対して、西洋人は自分なりの論理や価値観に基づいた個をより意識する傾向があると分析しています。

その顕著な例として、東西で異なるアプローチをしたサムスンの広告を紹介しています。
西洋では「サムスンの製品を所有することで、こんな自分になれますよ」「あなたの個性にサムスンの製品はマッチしますよ」というメッセージを発したのに対し、アジアではピクニックをしているふたつの家族を登場させた上で「サムスンは、もう一つの家族です」とアピールしたそうです。

今日はここまで。次回は、社会的経済地位(SES)との関連性についての分析についてご紹介します。

2014-06-12 | Posted in Blog, リサーチNo Comments » 

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