East and West : 和を以て貴しとなす?- 2/2

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前回に引き続き、ESOMAR発行の機関誌「RESEARCH WORLD」の記事からのご紹介です。

記事では社会的経済地位(SES)との関連も取り上げています。簡単に言えば、経済的に地位の低い層ほど、「個」よりも「同一性」を強く意識するというものです。
このことを自動車の購入を例に挙げて説明しています。

自動車を購入したところ、知り合いが全く同じ自動車を購入したとします。経済的地位の高い人は「あの人は、自分のマネをした!」と憤るのに対して、低い人は「君も同じ車を買ったんだね。一緒にカークラブを作ろう!」となるというのです。

この論理だと、「日本人=経済的地位が低い」となってしまうのですが、そうではない背景を筆者はこう解釈しています。
工業化から150年以上の歴史を持つ日本人の中で、西洋人が辿ったように「個」への意識が醸成されなかったのは、相互依存に対する意識が高い国民性だからと分析しています。つまり、日本人はちょっと特別だと。

一方、近年経済発展を遂げている中国では、やはり同じ東洋人でも日本人や韓国人に比べて「個」への意識が強くなる傾向があるようです。つまり、経済的地域の向上に伴い「個」に対する意識が強くなっていると見ています。

実際、筆者がある大手日用品メーカーの中国人のチームと新製品のシャンプーのミーティングをしたときのこと。それは、もはや西洋人よりもずっと活発な議論が展開されたそうで、筆者は中国人の個性化が急速に進んでいることを実感したと回顧しています。

筆者は、むしろ昨今のアメリカ人の方が、個よりもコミュニティとのつながりを強く意識し、リップサービスが増えているのはないだろうかと、中国人の急速な意識の変化に驚くと同時に、こうした傾向が景気低迷やホリスティックケアの普及に伴う相互扶助意識の高まりと少なからず関係があるのではないかと分析しています。

記事の最後にリサーチの実務についても少し触れています。日本人には、ホンネを引き出すことが難しいフォーカスグループよりも、テクノロジーや匿名性を活かした調査方法がより有効だと提言しています。その意味では、MROCやオンライン・コミュニティは、インサイトにつながるような「ホンネ」を引き出す有効な手段になり得るかもしれませんね。

アジアと言えば、中国や東南アジアの新興国にフォーカスした記事が目立つ中、日本人に多く言及した今回の記事は珍しかったので、紹介させていただきました。
個人的には、日本人にとっては「他者と違う自分になる」よりも「仲間にちょっと差をつけられる」コトやモノといったニュアンスの方がビビっとくのかもしれないなと思ったものです。
また、経済的に発展した日本において、必ずしも「個」に対する意識が醸成されなかったという部分については、聖徳太子の「和を以て貴しとなす」という言葉が頭をよぎりました。もうこうなってくると、リサーチやマーケティングだけの話ではなくなってきますね!

2014-06-21 | Posted in リサーチ, 未分類No Comments » 

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