ブックレビュー:モデレーター聞き出す技術

Share on LinkedIn

140704_Book_Review02

 

マーケティング・リサーチの手法に、グループインタビューやデプスインタビューと呼ばれるものがあります。どちらも司会者(モデレーター)が進行表に沿って、参加者から商品やサービスに対する声を集めるものです。6名程度の参加者を集めてディスカッションをするのがグループインタビュー、1対1で行うものがデプスインタビューです。

本書は、こうしたマーケティング・リサーチのインタビューの世界で活躍するモデレーターの筆者が相手から効率よく質の高い情報を聞き出す秘訣を紹介した本です。

本の主旨としては、ここで紹介されている技術が、商談や会議、勤務先でのコミュニケーションにも役立つと謳っていますが、日頃からマーケティング・リサーチに関わりのない方には、ピンと来ないかもしれません。なぜなら、あくまでもグループインタビューやデプスインタビューの話が中心であり、そこの知識や経験がないと、おそらく筆者の言っていることを具体的なイメージを持って理解することが難しいと思うからです。

逆に言えば、マーケティング・リサーチに関わっている方には、たとえモデレーターでなくても、調査に対する心構え、設問の作り方、発言を読み取る際のポイントの押さえ方など、大変勉強になる内容です。そして、マーケティング・リサーチのバックグラウンドのある方にとって、ここで紹介されている技術や秘訣は、商談や社内のディスカッションに応用できると思います。

具体的なインタビューの技術については、本書に譲るとして、一読して改めて気付くのは、インサイトを導き出す「キラー質問」はないということです。これは筆者も書いていますが、やはり泥臭く、地道に対象者の声に耳を傾け、発言を読み解いたプロセスの向こうに初めて「発見」が待っているのだなという思いを強くしました。

大量のデータを短時間で入手でき、かつそのデータを瞬時に処理できる現在において、ともすればインサイトを発見する作業そのものにも時間やコストの効率化が求められているかもしれない昨今ですが、どんなにテクノロジーが発達したとしても、ヒト(=リサーチャー)が持つ知識や経験、洞察力に勝る分析手段はないのかもしれません。

その意味でも、日々モデレーターとして現場の第一線に立って活躍されている筆者の言葉は、リサーチャーである私たちに勇気と自信を与えてくれます。

 

2014-07-04 | Posted in ブックレビューNo Comments » 

関連記事