ESOMAR GLOBAL PRICES STUDY 2010

Share on LinkedIn

10021501

「ESOMAR GLOBAL PRICES STUDY」の時期がやってきました。
本題に入る前に、そもそも「ESOMARって何?」という方 のために、簡単に説明させていただきます。ESOMARとは、オランダのアムステルダムに本部を置くマーケティング・リサーチの業界団体です。日本で言え ば、JMRA(日本マーケティング・リサーチ協会)ですね(規模は違いますが)。European Society Of Marketing And Researchの頭文字を取って、ESOMARと呼ばれています。「エソマー」とか「エゾマー」「エソマール」のように日本では呼ばれています。 ESOMARには、世界中の市場調査会社のみならず、事業会社のグローバルプレーヤーも加盟しており、グローバルにマーケティング・リサーチを提供してい る会社にとっては、その動きに目が離せない団体のひとつです。いわばマーケティング・リサーチのグローバルスタンダードの発信地と言ってもいいと思いま す。

今 回取り上げる「ESOMAR GLOBAL PRICES STUDY」は、世界中の調査会社を対象に実施しているESOMARの自主企画調査で、世界の調査費用を比較し、時系列でトレンドを見ていこうというもの です。ESOMARが用意した架空の調査案件に対して、会員各社が見積を提出することで、データを収集します。調査といっても色々な仕様があるわけです が、偏りが出ないように、また多くのマーケティング・リサーチ会社からデータを収集できるように、一般的な仕様が提示されます。例えば、こんな具合です。

プロジェクト1-チョコレート製品に関する調査
プロジェクト2-洗剤に関する調査
プロジェクト3-広告評価テスト
プロジェクト4-銀行に関するグループインタビュー
プロジェクト5-香水を使用している女性を対象としたグループインタビュー
プロジェクト6-家庭でのメディア利用に関するエスノグラフィー
プロジェクト7-デスクトップPCに関する事業所調査

こ れらの調査について、訪問面接調査や電話調査、セントラル・ロケーション・テスト(CLT)、オンライン調査などの定量的アプローチから、グループインタ ビューやエスノグラフィーといった定性的アプローチをカバーしています。また、調査の対象も一般消費者の他、事業所を対象としたB2B調査をカバーしてい ます。

マーケティング・リサーチ会社としては、自社の調査費用の水準や海外に調査を発注する際に委託先からの見積の妥当性をチェックする 上でのベンチマークにもなりますので、調査結果は大変重宝します。調査への参加は任意ですが、やはり参加して、自社のデータを反映した結果を見てみたいも のです。というわけで、弊社も参加予定です。ちなみに、7つのプロジェクトがありますが、その全ての見積を提出する必要はありません。弊社も、いくつか ピックアップして提出する予定です。調査の結果は、このブログ上で記事をアップしたいと思いますが、これまでの調査結果から興味深いお話を少しご紹介しま す。

日本の調査費用の高さは、世界トップクラスです!日本の調査費用の高さは、海外の調査会社の方とお話すると、お決まりのように出てく る話題です。『日本は何でそんなに調査費用が高いのか?』『何の費用がコストを高くしているのか?』『人件費か?』などと質問を受けることが、しばしばな んですね。実際、複数の国で実施される調査企画でも、「日本は高い!」という理由で対象国から外されてしまうこともあるくらいです。
ただ、この傾 向はあくまで従来型の調査機関に言えることです。つまり、近年急速に成長してきたインターネットリサーチ専業の会社には当てはまらないのです。それどころ か、日本のインターネットリサーチ専業の会社は、欧米に比べて、はるかに調査費用が割安です。このあたりの考察は、単独で記事にできるような背景がありま すので、別の機会に譲りますが、価格面だけ見ても、従来型の調査機関とネット専業者とは雲泥の差です。

費用に関連して、もう一つ興味深い 特徴は、日本の調査費用がこれだけ高いのに、リサーチャーの人件費は先進国ではかなり安い方なんです。例えば、「ESOMAR GLOBAL PRICES STUDY」の中で定義している業務経験2年以内のジュニア・リサーチャーの1日あたりの人件費は、日本はアメリカの6割、ドイツの約半分です。これを経 験5年以上のシニア・リサーチャーでみると、アメリカとドイツの半分です。調査費用は世界屈指の高さなのに、リサーチャーの人件費は先進国としては相対的 にかなり低いという不思議。
これには、日本のマーケティング・リサーチをけん引してきた従来型調査機関のビジネスモデルや市場調査及び市場調査に 携わるリサーチャーに対する社会的評価に起因するところが大きいと言えそうです。ネットリサーチ専業会社の急成長に伴い、マーケティング・リサーチのプレ ゼンスはずいぶんと向上しましたが、やはり社会科学としてのマーケティング・リサーチの地位確立といった根源的な問題は従来型調査機関の努力に委ねられて いると思います。
少し難しい話になってしまいましたが、さて、今年の調査の結果はどのように出てくるでしょうか。調査結果が出ましたら、またご報告させていただきます。

ESOMARのウェブサイトはこちら

http://www.esomar.org

2010-02-15 | Posted in リサーチNo Comments » 

関連記事